徒然と書いていこう

2017年12月21日

鍼灸と体外受精の併用 一周期あたりの成功率

ちょっと前になりますが、10月22日(日)に全日本鍼灸学会中部支部学術集会で発表して来ました。

今更?という感が自分でもありますが、珍しく自分の発表でしたのでここに載せようと思います。

抄録提出後もデータをできる限り追加したかったので実際の内容とは数字が少し異なっていますが、その辺はご容赦いただけると幸いです。

タイトルは

鍼灸介入下における体外受精妊娠率の調査検討
−胚移植一周期あたりの妊娠率−

という内容でした。

大先輩から白羽の矢を立てられ、急遽発表することになり("^ω^)・・・

まぁ時間がなかった割にはしたいことができたのではないかと思います。

この発表の背景には

・患者さんからの問い合わせがあった。(いつかは調べないといけないと思いつつ…)
・他の鍼灸院さんが妊娠率80%!とか色々ネットで宣伝されているようですが、実際そんなには無理!でも、当院の実際はどれくらいなのかな?という素朴な疑問。
・例えば100人が妊娠した!とか、上記の80%が妊娠した!とかあるけど分母の人数ははどれくらい?
・数回で来なくなった患者さんが後で妊娠したと聞いた→自院の成果とカウント?
・学術的には(妊娠判定日以降)結果が不明なものは分母から除外できる
 ➡全体における不明率はどのくらい?
  不明率が高ければ高いほど本当の意味では妊娠率がとても低い可能性がある
  不明率を除外する→研究的な方法での結果
  不明率を含む→実際の現場での結果
・鍼灸併用で妊娠率を出すということはある程度の区切りが必要ではないか?

ということがあり、今回の発表となったわけです。

妊娠率にも二つあって、累積妊娠率と移植周期ごとの妊娠率があります。
わかりやすく説明しますと、
累積妊娠率は不妊治療を行った3人中2人が妊娠した→妊娠率2/3で66.7%となります。
移植周期ごとの妊娠率は3人が9回胚移植した。そのうち2回妊娠した→妊娠率2/9で22.2%となります。
同じ人数でも、実際は内容がかなり違ってくることがお分かりになると思います。
また、結果が不明な方が入っていたら?もしくは除外されていたら?となると更に結果は異なってきます。

ということで今回いい機会をいただけましたので、自院の調査がてら出してみました。

以下学会での報告内容になります。

対象は2015年1月〜2017年9月の間で、鍼灸治療を行いながら胚移植した62名。
(体外受精の病院は特定の病院ではありません。近隣のいろいろな病院での治療を受けていた方です。)

総移植周期125周期
平均年齢 37.5±4.5歳 最高46歳 最少27歳
鍼灸治療は肺移植の前後1週間以内に行い、胎嚢確認を妊娠としました。

調査項目と気になる結果です。
【1】移植前180日間における肺移植回数(62人中)
  最少0回 最大7回 平均2.0±1.3回 
   鍼灸併用で胚移植を望む方は過去に2回ほど肺移植をされていました。
   そのような条件下での妊娠率となります。
【2】妊娠群と非妊娠群の平均年齢の比較(125周期中)
  妊娠:35.1±4.4歳  (36周期)
  非妊娠:37.7±4.5歳 (75周期) p<0.01(U検定)
  *結果不明群:40.2±4.0歳(14周期) 
  妊娠群の方が非妊娠群より年齢は低くなりました。
【3】妊娠率とその詳細
(a)胚移植1周期あたりの妊娠率(妊娠数/総移植周期)
  妊娠36周期 非妊娠75周期 結果不明群14周期
  ・妊娠率 32.4% (結果不明含まず)
       28.8% (結果不明含む)
  となりました。結果不明はその時点で妊娠しているかしていないか分らない、というスタンスです。
  妊娠していると期待したい所ですが平均年齢を考えると厳しいだろうと思われます。
  結果不明ということ除外したり含めたりということだけで、妊娠率が変わるということがお分かりになると思います。実際の数値は不明含むという方が正確かもしれません。
  
(b)累積妊娠率(妊娠数/患者数)
  総患者数62名中 妊娠32名 非妊娠16 結果不明14
  ・妊娠率 65.3% (不明含まず)
       51.6% (不明含む)
  結果不明ということが移植周期ごとより大きく影響しました。治療者としては慙愧に堪えない結果ですが。

(C) 移植方法別の妊娠率(妊娠数/移植周期)
  ・新鮮胚分割胚 27.2% (妊娠3/移植11)(不明含まず)
          21.4% (妊娠3/移植14) (不明含む)
  ・新鮮胚胚盤胞 0% (0/1) 
  ・凍結分割胚  20.0%  (妊娠12/60周期)(不明含まず)
          17.6%  (妊娠12/68周期) (不明含む)
  ・凍結胚盤胞  55.2%  (妊娠21/38周期)(不明含まず)
          51.2%  (妊娠21/41周期) (不明含む)

という結果を学会で報告しました。

今後は手作業での集計と計算はもはや限界ですのでフォーマットを作っていただき、症例を積み重ねていくことが必要になりました。

来年の大阪大会で更に症例を重ねたものを出せたらと思っています。

なお、この内容の無断転載はご遠慮ください。昨今他院の結果を自院のやったことのように宣伝する方の行為には目に余るものがありますので。


  

   

 

ラベル:妊娠率 学会発表
posted by あけぼの at 21:54| Comment(0) | 不妊症と鍼灸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月25日

ひと息。

6月は色んな学会やら会合やら用事やらのオンパレードで休みが取れなかったのですが、7月も終わりに近づきようやく一息つけそうです。

色々と考えさせられることが多かった月でした。

でも久しぶりに会えた人や、楽しい仲間との時間はかけがえのないものです。

充実した時間を過ごせました。

共同研究として助産師の方と産科領域の新しい取り組みも立ち上がりそうで、道は険しそうですが形になったら良いなーと思っています。(本当に課題が多い)

究極的には福井の産科領域への鍼灸のエビデンス的なものにまで発展すればと考えていますが、そんなことはまだまだまだ先のこと。

でも、一歩踏み出せたことは大きいと思います。千里の道も一歩から、ですし。

もっと勉強しなければと思います。

不妊症に関しても結構結果が出ました。

体外受精で結果が出なかった方がでたり、まさかの自然妊娠とか、近年例のないことが続いています。

今年ぐらいから始めた、子宮や卵巣を取り巻く環境への新しいアプローチがうまくいっているような手ごたえを感じています。

現在妊娠中の患者様は12人程。

と、この記事を書いていたら先ほど一人妊娠陽性。

うまく続いていきますように。
posted by あけぼの at 15:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 不妊症と鍼灸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月16日

免疫系の改善と妊娠

先日体外受精がうまくいかなくて自然妊娠された方のことを考えています。

その方は30代後半でアトピー性皮膚炎がもともとあり、来院当時は顔面は赤みが強く、肘や足、お腹などに結構症状が出ていました。来院1か月前に体外受精を初めて試み、卵が育たなかった上に採卵も空砲でうまくいかず鍼灸をご希望されてきました。PCOがあり、AMH値も低く正直妊娠するまでは時間がかかるだろうと考えていました。

月経周期も不安定で34〜35日周期で慢性的な頭痛にも悩まされていました。

来院されて1カ月がたち頭痛はかなり改善され、あまり起きなくなりました。

そして鍼灸開始後2回目の月経が31日周期になりました。

それまでは鍼をしていてもアトピーは赤みが逆に強くなったり、額や頬が悪化しました。

2回目の月経が来てから顔もきれいになり赤みも引いていきました。

3回目の月経は38日周期と伸びました。月経血が黒くなったので心配されていましたが、何かの変化として見るか、悪いものが出たのかもしれないということでそのまま様子をみました。

しかし顔はどんどんきれいになっていき、目の周りや鼻の周囲がカサカサだったのが潤いが出てしっとりとしていきました。

4回目の月経は29日周期と標準的なものになりました。(本当は体外受精を再開しようとしていましたが、ご主人が奥様の体調がよくなることを喜び、もう少しタイミングで様子を見ようということになりました)

顔はますますきれいになり、首回りの一部がかゆさと赤みが残る程度になりました。腕や足、その他の部分のアトピーもほぼ消失しました(薬は使用していません)

そして高温期が15日続き、自己判定で陽性が出ました。

こうしてみると、4回目の月経まではアトピーは改善傾向の中にも悪化することがあり、身体の中がいろいろと変化していったのではないかと思われます。

それまでは月経も伸びたり縮んだりと排卵にも影響があったことがうかがえます。

そして、今まで妊娠しなかったのはアトピーというわかりやすい指標から、体内の自己免疫が不安定だったからかもしれません。

鍼灸で免疫の働きが調和することになり、ひょっとしたら今まで攻撃していたかもしれない受精卵を攻撃しなくなったのかもしれません。

どのような仕組みで調和されているか…

学会とかでいろいろな免疫に対する鍼灸の検討がされています。

聞いている限りはややこしい話ばかりでしたが、実体験の中でこれほどわかりやすい結果が出ると本当に驚きを隠せません。

東洋医学的にはアトピーはいろいろな見方(弁証論治といいます)をするのですが、一つの体質として見ていくことの大切さを痛感しました。

鍼灸治療開始後はアトピーも併せて良くなっていくことを念頭にしていましたが、ご来院して4カ月目での妊娠には、体質の変化には多少の時間がかかること、うまく変われば自然妊娠もありうること、そして体質を変えるための鍼の技術や、灸の使い方、治療間隔(今回は週に1回)などを今一度人によって検討することが必要と考え直す良い機会になりました(今までもやっていましたが、それ以上に、ということです^^;)

色々な身体の診方、経穴の使い方等々あるのですが、ここで書くと他の治療者に悪用、誤用されるといけませんので書きませんが、今回の結果は不妊症鍼灸の醍醐味を感じました。

当院は難しい状況の方が多くお越しになられます。

もっと楽したいなと思わないでもないですが、どちらかというと困難なことに立ち向かうことの方が面白味とやりがいを感じる自分がいるのも事実です。

明日はどんなドラマが生まれるのか。

日々楽しみながら、真剣に仕事ができる喜びに感謝です。

では今日はこの辺で。
posted by あけぼの at 23:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 不妊症と鍼灸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする